今回は、山形市でのぷらっとほーむでの事例をもとに、実際の〈居場所づくり〉について、話を聞きました。
ぷらっとほーむは、2003年から2019年まで、講師の滝口克典さんと松井愛さん(現・山形市議)が共同代表となり、中心となって運営してきた〈居場所〉です。
最初に、ぷらっとほーむではどのような活動をしていたかを話してくださいました。
ぷらっとほーむは、フリースペースの開設から始まったこと。
やがて、フリースペースの周りにはいくつかのテーマコミュニティが出来上がったこと。
テーマコミュニティとは、あるニーズについて学べる小規模な集まりであり、不登校・ひきこもり、非正規労働などの社会的なテーマもあれば、映画、まちあるきなどの文化的なテーマのものもあったそうです。
「誰でも来れる居場所である」といっても、孤立している人にとってその扉を開けるのは勇気がいるもの。
もっとゆるい入口としてテーマコミュニティがあり、そこからフリースペースに来るようになった人もいるそうです。
「映画」のテーマコミュニティとは、ドキュメンタリー「ひめゆり」を山形市で自主上映するためにでき、活動したコミュニティでした。
チケットを売り歩くことを通じてつながりが増え活動空間が広がっていった、15人分の旅費を何とか稼いでひめゆりスタディツアーとして修学旅行にも行った、そんなエピソードも話してくださいました。
学びの後半、滝口さんはその経験を、〈居場所〉のプロセス・モデルとして説明してくれました。
それはぷらっとほーむの足跡をたどった時、それぞれの段階で何が起こっていたかを理論化したもの。
●第一段階で、安心して居られる、「弱音」をはける〈場〉をひらくこと。
●第二段階で、人びとのさまざまなニーズ=困りごとを引き受けるようになる。
●第三段階で、ニーズと資源・文化のユニークな結合がうまれる。
●第四段階で、〈居場所〉発の価値が外の世界にひろがっていく。
●第五段階で、〈居場所〉のネットワークがはり巡らされていく。
おそらく、居場所づくりを始めたい、すでに始めている人達にとって、「自分たちの活動は社会のニーズに合っているのか、今後どうなっていくのか、という漠然とした不安が生じることもあると思います。
それはさながら、自分たちの居場所は今どこにいるのかを示すための、先駆者が作ってくれた羅針盤のようでした。
見通しを持つと安心するのは、子育てでも、居場所づくりでも同じようです。
最後に〈居場所〉のもつ力について説明してくれました。
滝口さんは「居場所とは、雑多な人びとがゆるく共在している時空間です」と言いました。
「多様」ではなく、「雑多」という、空気感が伝わってくるような表現。
実践者ならではの言葉だなと妙に感じ入りました。
●〈居場所〉は遊びやゆるさのある時空間ゆえに、予期しないような色んなことが起こる。
●〈居場所〉には雑多な人々がいて、その多彩な関係性のなかで、さらに色んなことが起こる。
●様々な他者との出会いは、世の中にある悩みや苦しみを教え、自分の生きづらさが相対化される機会となる。
●〈居場所〉は弱い場所だから支援の手が引き寄せられてくる。若者はそこで過ごすことで、他者の困難に遭遇し、共感して手をさしのべ、学びながら成長していく。
最後に滝口さんは、これからの課題として、そうした居場所の恩恵を誰もが必要に応じて享受できるようにするためには何か必要か、として問いかけました。
現在、圧倒的に居場所が足りていない。
居場所は自然発生しない。
ファシリテートしていく中間支援の機能が必要である、と言って最後をしめました。
滝口さんはぷらっとほーむの活動を「たねを蒔き、育てたら花が咲いて、またたねができた。そのたねがばらまかれ、新たな場所で芽吹き、育てていったら色々なものになった」と形容されました。
様々な活動も元をたどれば一粒のたね。
庄内の〈居場所〉のたねはまだまだ足りません。
たくさんの〈居場所〉のたねが蒔かれ、育ち、横につながり、〈居場所〉のネットワークがはり巡らされた庄内になるように。
次回は、いよいよ最終回!
実際に〈居場所づくり〉を始めるには?〜〈居場所〉のはじめかた入門〜
明日、2月26日(水)19:00〜です。
まだお申し込み受け付けていますので、どうぞご参加ください!
(スタッフ 愛)